対象建築:ホテル+多目的商業施設
「Päike Katuse」
「日の差し込む屋根」
エストニアに伝わる伝統手工芸に勤しむ様子を商業施設というスケールで再構成し、そこに街の「軒」を作ることを考え、負の遺産となったパタレイと街とをつなぐ、いわば「タリンの軒下」となるような建築を提案した。
シェルピンスキーの四面体を応用した屋根を採用し、木漏れ日が差し込む半屋外空間を実現し、ショッピング、カフェ、ランニング、イベントといった市民の様々な活動を受け止めることが可能となる空間を目指した。
これが建築本体とパタレイとの間に入り込み、ランドスケープ的なグラデーションを生み出すことで、立体的な活動が外部にまで溢れ出す。
ホテル客室では、屋根は足元を包み、タリンの街並みをより印象的なものとなり記憶に深く刻まれる。
そしてバルト海まで抜ける風と視界が市民を沿岸部へ導き、かつての負の遺産は共生の未来へ向かって一歩を踏み出す。
講評
コンセプトを理解してから拝見すると「タリンの軒下」というテーマを訴求しようとしているショットが幾つもあることは分かるのですが、それぞれのショットで見せたいものを欲張ってしまった結果、特に初見だとどこをポイントとして見せたいのかが伝わりづらい印象です。まず構成として、オープニングで冬の刑務所棟を見せて〜という意図自体はとても良いと思います。しかし、ショットが短すぎるのと、刑務所棟の寂れたテクスチュアが見えずむしろ綺麗な雪の白さが目立つ構図のため、ここで伝わるべき荒涼感が伝わらず、惜しいところで機能していない感じがします。0:15〜の写真とスケッチ、それぞれナイストライだと思うのですが、2つを重ねてしまったために、両方の素材で本来伝わるはずだったものがどちらも伝わりきれずに終わってしまっている気がします。「軒」というコンセプトをハッキリ伝えるのでしたらここはスケッチをしっかり見せることに集中した方が効果的かも知れません。更に、受け手は白紙の状態で見ることを想定した場合、まずは「軒下」というコンセプトを伝えてそのコンセプトに沿って見てもらうことが効果的だと思いますので、0:37〜0:57の「軒」を見せるショットから始まってそれに続いて全体像、そして各部を見せるという構成がベターではないかと思われます。