対象建築:ホテル+多目的商業施設
私たちは、敷地をリサーチする中で見つけた『敷地に添えられた花束の写真』を手掛かりに、ブーケ状の建築を構想しました。監獄と対象敷地の両方に重なるように拡大したブーケを置くことで、監獄の強く閉ざした弓形をきっかけにしながら、町に向かってひらいていく新たな軸線をもつ建築が生まれます。
この建築が出来ることで、「パタレイ旧要塞監獄」の悲しき歴史を継承しながら、町の未来にひかれた賑わいの歴史が再び刻み始められます。
動画の中では、監獄にこの花束が置かれたであろう回想シーンを描き、その花束をきっかけに建築ができ、賑わっていく様子を表現しました。
この花束をきっかけに方針を考えていくことで、パタレイ過去と未来・建物軸線と空間、そして動画の構成をひとつながりの連続した作品としてまとめました。
講評
冒頭でたっぷりとパタレイ旧要塞監獄の情景を描写するというのは、今回のお題を踏まえると効果的な演出だと思いますし、限られた貴重な秒数の中で20秒を費やした思い切りの良さにも好印象を持ちました。ただ、とても惜しいのは、それだけしっかり冒頭でパタレイを描いたのに0:25〜のカットで新しい建築物とパタレイの位置関係が分かりづらく、頭に疑問符が浮かんだままラストまで見ることになってしまうということです。恐らく0:21〜の全体像俯瞰で位置関係を伝えているという意図なのではと思いますが、初見の観客にはこの段階でどこまでがパタレイでどれが新建築なのかが分からないのではと感じます。そして、0:25〜のカットの冒頭がフェードインで始まっている間にパタレイはほとんどフレームアウトしてしまうので、新しい建築物のビジュアルしか観客に伝わって来ない印象です。冒頭のイメージシークエンスを少し削ってでも、ここでもっとゆっくりのカメラワークで「パタレイ旧要塞監獄→新しい建築物へ」を見せておきたかったところです。その後の新建築各部を見せていくシークエンスでは、もう少しカメラワークに落ち着きがあるとベターかと感じました。例えば0:43〜のショットでは前への移動の後に上方へパン、1:01〜のショットでは上への移動の後に前方への移動、更にその後左へのパン、というように、ひとつのショットに違う方向への動きを混在させるのは、流れやテンポを崩しますし、観客にどこにフォーカスして見てほしいのかの意図が伝わりづらくなるのでなるべく避けた方が良いかと思います。