対象建築:ホテル+多目的商業施設
僕たちは、押し固められた原石だ。
この場所で、いろんな人に会い、いろんな物に触れ、
自分の可能性を広げ、磨き、輝かせる。
ボルダリングなどのアクティビティ施設で体を動かし、
世界中のボードゲームを詰め込んだ遊技場で頭を使う。
絵本、絵画、ファッションなど各々の創造性を披露できるブースや音楽の練習場を設け、
披露する側もされる側もお互いに様々な感性に触れ、成長することができる。
斜めの黒い壁に囲われた通路は、鏡面反射により、時間や位置、人や物の数によって違う表情を見せる。
誰しも、辛く悲しい時がある。
でも、あらがえない圧力で押し固められた日々があったからこそ、私たちは強く、優しく、自由に歩んでいける。
負の遺産の隣で、今日も新しい個性が輝きだす。
・映像を先に撮り、後から音楽を合わせた。そのため、音楽はオリジナルで作成。
・ナレーションを入れ、映像の雰囲気を演出。
講評
言語、言葉というのはムービー作品を作る上でとても強力な武器ですので、コンペ作品の中で稀な、ナレーションを使った構成に挑まれたのは良いことだと思います。ただ、パタレイ旧要塞監獄の歴史の重たさ、ムービーの画や建築デザインの重厚感に対してこのアニメ的な声や台詞がマッチしているのだろうかということには疑問を持ってしまいました。勿論、若年層向けの施設でしたらこのナレーションが効果的なのだと思いますが、ロケーション、施設の性格、内装などを踏まえると、比較的年齢が高めの富裕層向けの施設なのかと思われますので、重厚感なり透明感あるナレーション演出が適切だったのではないでしょうか…。建築デザイン各部の見せ方については、構図の取り方、カメラ移動の仕方、編集の繋ぎ方など、とても適切だと感じました。しかし一方で、大きく分けて2つ(根本的にはひとつ)の欠陥があると思います。基本的には1:11〜のショットの部分でやろうとしている部分です。まず、新建築物の全体を一望出来るショットがこれを含めてひとつもないため、観客が建物の全体像を把握出来ずに終わってしまうことです。そしてそれも含めて、パタレイ旧要塞監獄と新建築物がどういう位置的、コンセプト的な関係を持つのかがビジュアルとして見られるショットがないため、今回のコンペの根本的なお題がクリア出来ていないということです。冒頭とエンディングの情景ショット、意味がありそうに見えて実はあまり意図が伝わってこないこともあり、この尺を削ってその分、やはりエアリアルからの敷地全体のショットをしっかり見せると、もっとコンセプトが伝わりやすいかと思いました。映像にとって音楽とのタイミングマッチはとても強い演出の武器になりますので、音楽を自作されたのはとても良い試みだと思います。