林健斗
大成建設株式会社
対象建築:マンション
まず初めにモンゴルの出生率は上昇しています。
10年前には年間4万9000人だった新生児は、昨年は8万人でした。
しかし市営の幼児教育施設にはその半数を受け入れるスペースがなく、保育園の建物は老朽化し、需要と供給が追い付いていません。
そこで新たな保育園と目の前の国立公園を臨むようなマンションを計画します。
またシルクロードを介して交易の中心地であったウランバートルに親御さんたちが子供を預けた後にちょっとした買い物ができるような店舗を配し、親同士や地域交流も行われるような商業施設を内包する施設を提案します。
低層部の1、2階に保育園。3、4階に商業施設。高層部の5階以降をマンションとして計画しました。
講評
解説文を拝見すると、とても具体的なプランに基づいてデザインされた建築空間であることが分かります。しかし、解説を読む前にムービーだけを観た際、残念ながらそのコンセプトは全く伝わって来ませんでした。映像はある意味、あらゆる伝達手段の頂点に立つメディアで、イメージ以外にもテロップによる文字やナレーションによる言語でも情報を伝えることが出来ますので、それらをもっと積極的に活用されてはいかがでしょうか。イメージカットの編集によるムービーは、心情や印象を伝えるにはとても有効ですが、本作の建築に込められたような具体的な目的・用途を伝えるのには時折、不向きであることがあります。また、テロップや図解、ナレーション以外にも、LUMIONによるCGだけでない、建築物自体とは直接関係のない静止画やムービーを利用することも有効です。遊ぶ子どもたちのイメージ映像/静止画、買い物をする人々のイメージ映像/静止画などを織り込んでいくことに加え、最小限のテロップかナレーションで補足していけば、本来このプレゼンテーションに必要な情報が伝わるのではと思います。冒頭のスケッチ的なタッチから色が付いていく演出は、導入としてはかっこいいと思います。ただ、今回の場合、そこに秒数を費やすよりも、モンゴルの出生率データなり、具体の情報提示に費やしたほうがよかったかも知れません。演出技法については、フィルムっぽく見せる効果を多用されているようですが、それはどちらかというとノスタルジーを喚起するための手法で、未来に向けて作られようとするこの建築物のプレゼンのための手法として適切かということには疑問が沸きます。カメラワークもせわしなく、もっとフィックスを多用して落ち着いて見せる方が有効だと思います。1:00?の時間経過ショットについては、人が消えていくのは編集によるディゾルブでやらないと、突然消えていくことになってやはり違和感が出てしまっていますね…。こういった箇所については特に、LUMIONで完結ではなく編集ソフトを活用されることをおすすめします。