安部信汰
大成建設株式会社
対象建築:マンション
モンゴル都心部で暮らす集合住宅居住者は、近隣世帯とのコミュニティが希薄である問題が存在する。
しかし、移住文化の近所付き合いには、生きるための物々交換など、なくてはならない大切なコミュニティがあった。
そんな物々交換の文化形態を「市場」とし、コミュニティを豊かにするようなマンションと市場の複合建築を提案する。
市場を1,2階と螺旋スロープのボイド空間に、住戸をその周囲に配置した。
住戸部分に聳えるガラス棟内部には、厳しい天候を乗り越えるための設備室を設えた。
内装には、ゲルの菱型格子を彷彿とさせるデザインを施した。
タイトルの「ナラントール・ザハ」は、モンゴル語で「半屋外の市場」という意味である。
半屋外の市場は、アクティビティを外部へと溢れさせ、活気に満ちた建築を作る。
住民たちは屋内の住戸で快適に過ごし、半屋外の市場でコミュニティを築き上げる。
昼夜を問わず賑わうナラントール・ザハに、今日もまた日が昇る。
講評
建築物の色彩、デザインが印象に残りやすいもので、それを効果的に見せるための構図を切ることが出来ていると思います。0:16?0:25のショットの流れなどは、基本に忠実ですしとてもいいと思います。0:45?の手持ちカメラ効果も、この空間に居るような感覚を味あわせてくれて効果的ですね。0:56?のトラックインのカメラの動きなども、建築デザインが生きるショットで素敵です。ただ、各ショットが短すぎて、頭に入って来る前にどんどん次のショットに行ってしまうので、最終的にあまり心地よいムービーとして印象に残らない=あまり心地よい住空間として印象に残らなくなってしまっている気がします。ショットを厳選して、多くとも今の半分の数に減らし、その分、今の2倍、これぞというショットについては今の3倍位は秒数を取って見せる必要があると思います。ほとんどのショットで、必要な秒数を掛けていないためにその中でのカメラ移動も、適切な速度を大幅に超えて速くなってしまっています。移動するカメラワークが効果を発揮するタイプの建築デザインではあるのですが、カラフルで情報量の多いデザインだけに、かなりゆっくりなカメラ移動がふさわしいと思います。オープニングについても、本作品については、こういった遠景から入る意味があまりないと思います。デザインが強い建築ですから、むしろカラフルなガラス面のクローズアップから始めるようなやり方のほうが、一気にこの空間のコンセプトに引き込めて良い気がします。