田邊大、島田潤、佐藤有記、荒和正
竹中工務店
対象建築:戸建て
タイトルの“Mθc”[ムス]はモンゴル語で氷の結晶を意味する。
氷のように”態”を変化させながら、大地そして大気と呼応する建築の群れを目指した。
吹雪のなか雪の世界に溶け込み、青空のなか鳥の姿を映し、星空のなか宇宙と一体になる。
内部はぼんやりと光り輝き、氷の中の蝋燭のように輝く景色をまちに創り出す。
建物の内側では、炎、光、人間、大地、大気、星、すべてがまざり合い万華鏡のような空間をつくりだしている。
この氷山のような10棟が、壮大な山や川をたたえるモンゴルの大地の中に群れ、態を変えながらうごめくことで、新しいと同時に普遍的な景色を創出するだろう。
時間・天候・周辺環境が変わる中で、吹雪・夕暮・星空・日出・青空と、モンゴルの次々と移りゆく環境の変化を連続的につくりだし、それに応じて素材、建築、ヴィラ群が見せる多種多様な表情を映像にすることを試みた。
講評
0:19の横移動ショットから木の幹を利用したワイプのトランジションなど、使われている映像技法やギミックは、とても効果的ですし、映像をスタイリッシュに見せていると思います。冒頭を吹雪の環境音のみに絞り、前述のワイプに合わせて音楽を始めているのもかっこいいとは思います。音楽のや映像のオープニングの明確さに対して、エンディングがあまり明確でなく、どちらも何となくフェイドアウトしているだけなのはとても勿体無い印象です。オープニングと同じか、むしろそれ以上に、鑑賞後の全体への印象を決めてしまうエンディングも大事ですので、そこでひと工夫欲しかったところです。また、オープニングについてですが、せっかく環境音のみに絞って霧も有効に使い、期待感を高めたのにも関わらず、0:15からのショットで割と無防備に建築群の全体像を見せてしまうのはかなり勿体無い気がします。ここはもう一声引っ張って、0:19からの音楽スタートと共にバーンと建築物も見せた方が効果的ではないかと思います。そして、0:21から右下テロップでコンセプトを解説していますが、このテロップ、映像と文字のどちらに視線を動かせば良いか混乱させて両者への集中を妨げてしまっていて、効果的でないのではという気がします。オープニングの「引っ張り」18秒間のところにこのテロップを入れてしまって、本題が始まったらなるべく映像に集中させた方がよいのではないでしょうか。0:36からの「真空高断熱?」などの情報テロップについては、右下に収まっているとやはりどうしても一度視線がそこに移動し、映像からの集中を削いでしまうので、いっそ画面中央に入れるか、少しスタイリッシュ度は下がっても画面下中央、もしくは左上など、視線の動きの少なくて住む箇所に入れた方が良いかと思います。全体的に、色味の調整の仕方、光の使い方(特にガラス素材への反射)はとても良いと感じました。0:53?のショットも、使い方の難しいタイムラプスを上手く使っていらっしゃって、効果的と思います。