吉沢彬成
清水建設株式会社
対象建築:戸建て
ウランバートルの土地に根差して生活する家として、建築をいくつかの要素で包みこむことを考えた。
1「空気」に包まれる
家の中心インドアリビングは、様々な活動の場をもった廊下に囲われている。
開口からは日々の暮らしが垣間見えどこにいても家族の空気に包まれる。
2「布」に包まれる
建築はモンゴルの人々がパオで慣れ親しんだ羊毛の布で包まれる。
夏にはシェード、冬にはカーテンや絨毯として空間を包みこみ、人々が衣替えをするように建築も外的要因に順応していく。
3「地域」に包まれる
なだらかな起伏を持つ外構やアウトドアリビング、部屋と部屋の隙間がうむ地域との繋がり。
それらが生むこの地に住まう人々の地縁は1戸1戸を安心や明るさで包みこみ、快適な住環境を形成する。
建築の包みを開くとき、ウランバートルならではの生活が始まる。
講評
まず、私個人的には、実写を織り交ぜる、ナレーションを使う、という他作品がほとんど試みない手法に挑戦されていること、そしてそれらの手法は本来、プレゼンテーションムービーにはとても有効な手法だということで、評価したい作品でした。特に、冒頭とエンディングの、家の模型を布で包む実写は、この建築デザインのコンセプトを端的に伝える上でとても効果的だと感じました。一方で、ナレーションに関しては、まず、録音状態が非常に悪いのが大きなマイナスです。受け手にとって、音質が悪いのは画質が悪いよりもストレスが大きく、印象を悪くしてしまいます。今はかなり低価格のマイクでもそれなりの音質で録音が出来るマイクもありますし、あとはやはり、編集ソフト等で多少なりともノイズフィルタやイコライザを掛けることで大分、クリーンで聴きやすくすることも出来ますので、そこは是非留意された方が良いと思います。また、ナレーションの台本ですが、本作品の原稿は基本、映像を見せながらプレゼンテーションをする時のための原稿という形かと思います。ムービー単体で鑑賞してもらう時のナレーション原稿は、プレゼンテーションの原稿とは実は根本的に違うもので、「プレゼン主体・映像で補足」のプレゼンテーションとは逆に「映像主体・ナレーションは補足」と考える必要があります。もっと短いフレーズで、映像だけで伝わらず、且つどうしても伝えなければならない心情や情報だけを入れ込むという考え方で組み直されることをおすすめします。音の使い方としては、音楽を廃して包丁や電子レンジの音、足音やドア、子供の声などだけで構成されたのは、生活感をしっかり感じられてとても良いと思いました。それだけに、ナレーションを最小限に抑えてそれらの音を聞かせたいところです。