穴田志穂
大成建設株式会社
対象建築:マンション
建築について:
L字型の大きなボリュームを用途によって分割し、人々がただ単に住むだけではない複合的な施設を提案します。
ボリュームごとに生まれる隙間のすべてをテラスとし、目の前に広がる国立公園に向かって視界が開けることを意識しました。
テラスが積層し、ウランバートルの豊かな自然が建築にも取り込まれることを意図しました。
動画について:
縦方向の高さが強調されるように、下から上へと上がっていくカメラワークを意識しました。
その際に、一つ一つのテラスで何が行われているかが見えるようテラスに沿って建物の周りを回っていくようなストーリーとしました。
講評
積層するテラスをフィーチャーして見せるという意味では、見せ方自体は正しいのかと思います。ただ、全体を見終わった後に、あまり、気持ちの良いテラスのある生活が送れる空間という印象が残りませんでした…。何故なのか考えてみたいと思います。まず、冒頭とラストが雪の風景になっていますが、雪の中ではテラスは活用されないのではないでしょうか。ラストが雪で終わってしまうと、演出的にテラスをフィーチャーするという意図と逆の効果を生んでしまうような気がします。また、多くのショットで、カメラが「外観→内観」もしくは「内観→外観」というように、内と外をまたいで移動するため、受け手としては、このショットは建築物の構造を伝えるショットとして観ればよいのか、それとも、建物内に暮らす人物の視点を味わえば良いのか、どちらなのか迷い、結果としてどちらの機能も果たさず終わってしまっているということも大きいかと思います。欲張らず、一つのショットでは一つの意図・目的を果たすことに集中することが結果として、効果的な演出に繋がるかと思います。そして、本作品でより重要なのは、このマンションで暮らす人々がテラスでどんな時間を過ごせるのか、ということだと思いますので、テラスに居る人達の視点のショットを、しっかり作って織り込んでいくことが必要なのではないでしょうか。テラスで遊ぶ子供、ベンチに座っている人、そういった人々からどういう光景が見えているのかを見せるショットです。(そういうショットが実は、この作品にはひとつもありませんね…)テラスで遊んでいる子供や、パーティーをしている人々などを配置しているのはとても効果的だと思うので、そこから進んで、その人達に共感させるためのショットをお考えになってみると良いかと思います。