キリロム公園の豊かな環境と共生するコミュニケーションホール。
1.既存樹を伐採せず、既存樹の配置を活かした計画とする。
2.敷地の傾斜を活かした計画とする。
3.内外連続した風環境を実現するため壁はつくらない。
4.キリロム公園の赤土を利用した空間づくりとする。
5.一般の人にも作りやすい施工方法とする。
以上5項目を条件に計画を行った。
用途はライブラリーの中にカフェ、店舗、ギャラリー、シアター、ワークスペースが点在する複合施設である。
一般的には各用途を区分するため間仕切りを設ける傾向にあるが、傾斜を活かすことで緩やかに空間を分断させながらも、様々な行為が一つの風景の中で展開される公園のようなコミュニティセンターを提案する。
全体をライブラリーとすることで落ち着き感を維持しながら個々が好きな場所で本を読むことができる。傾斜方向に向いて座ると皆が同じ方向を向いて座る為、プライベート性が確保できるのも傾斜空間の特徴である。キリロム工科大学の学生がデザインした展示品も本と同様の展示方法とすることでそこは、ギャラリーにもなり、ショップにもなる。
床はW100×D200×H50の赤土レンガを1つのモジュールに傾斜に沿って積み上げていく。4段積むと階段の1段。8段積むと椅子。16段積むと机。32段積むと本棚へ。1つの赤土レンガの積重ねが家具を構成し、建築を構成する要素となっている。
屋根は膜天井とし、雨は透過させず光を透過させる膜によって屋根を構成している。既存樹木の配置をいかし、既存樹に簡易に括り付けられる膜天井は大きく全体を覆うのではなく小割で連続させることでワンルームながらも陰影により、様々な場が展開する。膜と膜の間には雨が流れ、その下には花が咲く。膜を透過した既存樹の影の下では読書を楽しみ、天井に映像を投影することでそこは屋外シアターにもなる。
傾斜によって床の段差が決まり、既存樹によって屋根の大きさが決まる。
既存のキリロムの環境を最大限に活かしたコミュニケーションセンター。
街を牽引する新しい風景となることを望んでいる。
講評
オープニングでしっかりと全体を通じてのコンセプトを伝達し、そこからイマジネーションが広がっていく組み立てになっているのがとても良いですね。冒頭の赤土に線でレンガを表現されるあしらいもセンスを感じます。人や小道具の配置の仕方も、この空間で人がどんな時間を過ごすかを感じられて良いと思いました。ただ恐らく、要所要所、もっとカメラワークを大分控えめにしたショットを入れておくと、更に、そこで過ごしている人間の気持ちになれるかとも思います。例えば0:53のショットなどは特に、同じテーブルについているような感覚になれるところだと思いますので、カメラは動いているかいないか程度の移動に抑えられたら良いかもしれません。もうひとつは全体の構成として、オープニングがとても強いオープニングなのに対し、終わりはただ夜景の引き画をフェードアウトしているだけの弱い画になっているのでバランスが悪い印象です。せっかくですので、ラストでもレンガのコンセプトに戻るなどして完結した感じを出されるとベターではと感じました。