計画地キリロムパインリゾートにおいて主にキャンプ・コテージ宿泊者の案内所となるビジターセンター計画のイメージ。
雨季の増水で湖川の面積が10倍になる事もあると言われている計画地域において必須となる雨水排水の為の集水路が降雨時にそのまま小川・苑池といった修景の仕掛けとなり、その苑池中心部に循環機能を持つセンターを設えた。
それにより土地の高低差をそのまま生かし、より豊かに自然を享受する宿泊体験を可能とする。
ビジターセンターは三層(+地下雨水貯留槽)から成り、B1Fはショップ・レストラン。1Fは総合案内。2Fは展望ラウンジ・コミュニティホールとなっている。
張り巡らせた根と太陽光によりそこで育まれる「植物の様な建築」であり、計画地カンボジア王国は大多数の国民が仏教を奉ずる国である事から全体配置計画とセンターの形状を「蓮」に見立ててデザインし、当該施設をlotus (水蓮)と呼称した。
講評
とても基本に忠実に、プレゼンムービーとしてしっかりまとまった作品と感じます。全体を通じたコンセプトが何かというのがはっきりしていますし、軸がそこからブレていないので見終わって「何を見せられたか」がきっちり意識できて残る印象が良いですね。フェードイン・アウトも含め、全体の構成にも始まり・中・終わりがくっきりあって見やすいです。編集についても無駄なディゾルブがない気持ちの良いカット編集で、カメラの動きも必要な分だけ適切なスピードで動いていると感じます。ここで「どちらがよいか」という難しい問題に直面するのが、テロップです。それぞれのカットについてテロップで説明を付けられていて、とてもクッキリ分かりやすいですし、文字数や文字の大きさも適切なので、すごく「親切」だと思います。一方で、テロップで現されている内容は概ね、画の中でほぼ伝わるものでもあり、テロップが無い方が雰囲気が保て、ストイックさも出て、且つ観客の想像力が膨らんだかも知れません。また、テロップを読むことでせっかく作り込まれた映像を細部まで見るための時間がそちらに取られてしまうこともあります。何を目指すかによりますのでどちらが良い、悪いという単純な判断は出来ませんが、個人的にはせっかくここまで伝わる映像があるので、ムービーは映像に徹して、ディテールの情報はプレゼンや配布資料で伝える方が好みではあります。特に1:21のところは情報過多になってしまっていて、とても勿体無い気がします。やるのであれば花、葉、茎、根をそれぞれごく短いカットで見せた後に下絵を見せるという形で編集で組み立てた方が、雰囲気を崩さず良かったかも知れません。それを差し引いても、今回の中でも非常に完成度の高い作品かと思いました。