キリロムという南国の高原リゾートという場に相応しい、爽やかであり野性的であるクラブハウス・ホテルを目指しました。
円形の建物の壁を全て南北方向に伸びるスリット壁でデザインすることで、東西から建物に正対すると重厚で存在感のある彫刻のように見え、南北から正対するとキリロムの自然環境や生態系が建物の中に滑り込んだような印象を受ける、「塊」と「透」ふたつの印象がグラジュアルに変化していく建物になっています。
ホテル宿泊者は周囲からのプライバシーをカットしつつも、自然の風景をいっぱいに堪能できる客室とバルコニーを手に入れることができます。
クラブハウス利用者は、広くて日陰の少ないゴルフ場から木陰に隠れるようにこの箱庭のような建物にやってきて、体の火照りを冷ましたり、食事をとったりすることができます。
キリロムの自然の豊かさを最大限に取り入れながらも、リゾート施設にふさわしい高級感・存在感をもった建築です。
講評
解説文を拝見すると設計意図が良く理解できるのですが、ムービー中にそれらの意図を表現する映像的記号が入れ込まれていない気がします。「爽やか」「野性的」というデザインイメージは、ご自身としてはどの映像記号で示されているのでしょうか?また「東西から正対すると重厚、南北から正対すると透明感」という設計意図を表現するには、東西から正対するカメラ→円軌道移動で南北からの正対へ、というカメラワークのショットが必須だったと思います。もしかしたら樹木が邪魔だったのかも知れませんが、そこはCGなのでそのショットだけ樹をどけてしまう位のことをしても、そのショットは必要だったのではないでしょうか。それから、タイトルは「Vacation in Kirirom」ながら、バケーションを感じさせる要素(記号)がほぼ皆無という印象です。人はここでどう過ごし、どんな余暇を楽しむのかという人間味が感じられる要素(小道具、衣装、そして人物など)はやはり必要と感じます。また、全体にちょっと彩度を落としすぎ、またうっすら白いフィルタのようなものが掛かっているのが、バケーションという雰囲気とはマッチしていないように感じました。