キリロムの豊かな自然を知り、人と建物、そして自然が共に在る作品を考えました。コミュニティセンターというテーマに対し、一般的な図書館やカフェといった用途を限定するものではなく、時間や人によって異なる使われ方をする建物にしたいと思いました。
建物の床や屋根は地面からひらりと浮くように細い丸鋼で支えられながら一続きになり、高低差のある敷地を楽しむようになっています。既存である木々の間を縫うように床や屋根は折り重なり、白く塗装された全体には、うつろう木々や鳥・人の影、太陽の光が映り込みます。例えば、壁一面に広がる本棚の近くで勉強をしたり、丸く切り取られた光の動きを眺めたり、周辺の家具で休みつつ土地全体を楽しんだりできるかもしれません。
これらを表現するために、動画は、各々の視点や時間を切り取るように断片的に構成しており、見る人それぞれの空間を感じてもらえればと思いました。
講評
目を引くデザインの建築物を抑制の効いた撮り方で見せているのが良い感じと思いました。少し勿体無いのが、役割の重複するカットが幾つかあることで観客が飽きる恐れのあることです。冒頭の樹々のみのショットにあまり意味がなく、次の樹々の奥に建物が微かに見えるショットと重複しているので、2ショット目にテロップを乗せて1カット目は省略してもよかったかも知れません。一方で0:15?の横移動ショットと2カット目もかなり似ていますので、いっそ、0:15?のショットをもっとずっとゆっくりのカメラ移動にして冒頭から30秒たっぷり見せつつ、その頭の部分にテロップでも良いかもです。0:15?の移動ショットはこの建築物の魅力を一番伝えているとても素敵なショットだと思いますので、ゆっくりじっくり見せたいところですし。0:30?のカットと0:36?のカットも役割が重複しているので、どちらかだけで良いかと思います。0:36?のショット、空を飛ぶ鳥の影が床を横切るのが演出的に素敵で良いですね。0:45?の動く影だけのショットも、情報は伝わらなくても情緒とテーマが伝わり、とても良いと思います。0:53?のショットも構図はいいのですが、欲張ってタイムラプスで光を動かしているのが逆に観ていて煩い感じがしてしまいました。勿体無い気がします。人々の動きは通常の時間軸のままですし、ここは日射もそのままで、観客がこの時間に浸れるようにした方が効果的ではないかと思います。最後に音に関してですが、音楽の他に微かにずっと水音が聴こえるのは、小川の音という設定でしょうか?それであれば冒頭に近い部分で小川のビジュアルをインサートしておくか、もっと小川と分かりやすい音を使う必要があるかも知れません。最初観た時は「誰か洗い物をしている?」と思ってしまいました…。