<建築のポイント>
キリロムに集うみんなを包み、支える、「傘」のような建築。本を湿気から守る最低限の場所以外は内外を仕切らず、カンボジアの厳しい気候環境下でも気持ちよく集うことのできる大空間。晴れの日には日傘となり、厳しい日差しを防ぐ。雨の日には傘となり、本を介さずともコミュニケーションが生まれる場となる。屋内にこもるだけではなく、半屋外となった大きな傘の下で、キリロムに根付きつつも新鮮な、そんな暮らしが生まれることを願う。
<映像のポイント>
東南アジアの豊かな自然、開放的な暮らしのイメージを余すことなく表現した。エフェクト・環境音・BGMの統一感を大事にして、実際にこの場所を訪れたかのような感覚に引き込むよう、シーンのつながりも強く意識した。全体的にブリーチ・ビネット・手持ちカメラの効果でややレトロな雰囲気を醸し出しながら、御光や舞い上がる葉によって温かみも感じられるような映像に仕上げた。
講評
ちょっと、知識として得たテクニックを試してみたい気持ちが強すぎて、本来テクニックを使う目的を逆にそこなっている気がします。まずビネットやブリーチ、フォーカスずらし等はレトロなものをレトロに見せるには有効かも知れませんが、本ムービーはこれから作る新しい建築物をプレゼンすることですので目的とテクニックがマッチしていません。単に見づらくなってしまっています。柔らかく見せることが目的でしたら、軽いソフトフォーカスと、少し色を暖色系に転がす位が良いかと思います。また「傘のような建築」がテーマとのことですが、それが伝わるショットが見当たりません。しっかり全体像を伝えてから、「傘」の下で過ごす人々の姿へという構成が必要だったかと思います。「間仕切りのない開放感」を表現したかったとのことで、落ち葉や屋根の上の鳥たちは効果的と思いますが、それであればBGMではなく、風の音や鳥の声などの環境音だけで音を構成した方が、更に効果的だったと思います。